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2016年2月9日火曜日

きせつの通りみち




わたしの恋人は さくら通り 春の色
よごれきった わたしのために うたう あなたの声
わたしのふるさとは こはく通り 秋の風
つかれきった わたしの髪を なでる あなたの指

かえりみち つなぐ手と手
オレンジの坂を下りる
わけもなく さみしい歌 うたいたくなるのはなぜ
おだやかに 沈む夕日
ふたりはそっと黙り込む
誰も来なくてもひとりで待っている
あのちいさな 犬はいない

わたしの恋人は しずく通り 夏の雨
かわききった わたしのこころ ぬらす あなたの影
わたしのふるさとは たき火通り 冬の空
こごえきった わたしのからだ つつむ あなたの腕

わたしの恋人は さくら通り 春の色
よごれきった わたしのために うたう あなたの声
わたしのふるさとは こはく通り 秋の風
つかれきった わたしの髪を なでる あなたの指

ぬらす あなたの影
つつむ あなたの腕

うたう あなたはどこ



2015年11月7日土曜日

立冬

一度だけ
心も体も真白に
洗濯して
干されてしまいたい

願わくば
夜になる前に取り込んで
ひとつずつ
畳んでしまいたい

生温い
風が通った境界例
捨てないで
大事にしていたい

後ろから
急発進した鹿の群れ
悉く
轢かれてしまいたい

粗相して
交わる風景殺したら
今すぐに
無にしてしまいたい

好いた彼の
黒いコートと体温に
躊躇わず
縋ってしまいたい

去る恋の
淡い記憶と御徒町
気紛れに
忘れてしまいたい

裏瞼
赤い血眼
なみだ色
惚けて目を綴じ
冬が来る

ああ冬が来る

2014年8月20日水曜日

菩提樹



執着から解脱して
菩提樹登れば
霞む記憶

善悪だけに偏った
若い解釈も
喪ってご老体

砂に描いた絵の
細い線がわたしを惑わす
この世界には何も
畏れるものはないと呟いて

彼は逝った
振り向かずに
陽炎も知ったような
昏い顔のままで微笑んだ
手を取って
交わした温もりも
途絶えて、とうに地獄へ堕ちた後さ


虚ろな喧騒も
何処か遠くへわたしを誘う
この世界には誰も
誇れるものはないと囁いて