2016年1月6日水曜日

花売りの回想



手放した掌を追いかけても
もうそこには誰もいなかった
慌てて振り向いた背中に
溜息がひとつ零れた気がした

霞がかった公園の木々は
暖かな冬を愁いて空を見上げた
わだかまりも意味のない沈黙も
太陽のいない白い朝に消えた

見詰められない
想い出の中
あなたとわたし
花を抱きしめて
忘れられない
エンドロールに
恋人はただ
遠く去っていく



去っていくときはただ、何も云わずに、しずかに去っていきたいのだと思う。
彼女や彼もそんな気持ちなら、たいせつにしたいと思う。
私も同じ立場なら、きっとそうすると思うから。

いまはどこにいるのだろう。
みんなどこにいってしまったのだろう。
ここには誰もいない。

祖父も最期には、こんな気持ちだったのだろうか。
みんなどうして、いなくなってしまうのだろう。


こんなにも穏やかな冬の夜なのに、どこかさみしい心の中です。
最近ほんとうに暖かだから、忘れていたけれど、冬はいつもこんな感じ。
さみしいと、さみしくないの、ちょうどあいだらへん。

あしたは美味しいものを作って食べよう。
友人への贈り物を買いに行って、手紙を書いて、図書館へ行こう。
気になっているパン屋さんへ、パンを買いに行こう。
どんどん孤独になっていこう。だってひとりだもの。

それでオッケー。いまはひとりがいいの。
ずっと甘えっぱなしだったから、ひとりでも大丈夫、に、なっていきたいの。


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